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怪傑ハリマオ/戦前編

「連続テレビ映画」の『怪傑ハリマオ』には、戦前編があります。
と言うより、こちらが元祖です。
(戦後のハリマオ:http://suncloudy.exblog.jp/19621825/)

福岡県出身の谷豊をモデルにした映画『マライの虎』(1943年)。
谷はマレーシアに住み、「盗賊ハリマオ」と呼ばれていました。
イスラム名が「モハマッド・アリー・ビン・アブドラー」。

映画の主題歌は東海林太郎が歌いました。
YouTubeでは削除されており、
今は歌無しの映像しかありません。
歌詞が字幕で表示されます。



(以下、与太話です)




歌詞に
「強欲非道のイギリス奴
天に代わってやっつけろ」
と出てきました。

戦後版ハリマオの歌詞は
「正しい者に 味方する」
「正義に結ぶ この勝利」
です。

どちらも「正義」の話であります。
しかし、その正義が時代や思想や立場によって、姿を変えるのです。

戦前の日本は「大東亜共栄圏」を構想し、
その建前として、つまり正義ですね、植民地アジアを白人支配から解放する、
としました。
だから、歌詞に「強欲非道のイギリス奴」と出てくるのです。

大東亜共栄圏の柱となった思想は、
「八紘一宇(はっこういちう)」でした。
国柱(こくちゅう)会の、田中智学(ちがく)が提唱した国体思想で、
「一つの屋根(思想)で世界を覆う」という意味です。

「八紘一宇」の思想を神道や天皇と結びつける人もいます。
たしかに、『日本書紀』を出発点にした国体思想であるし、
戦争の深化にともない、一体化していきます。

ところが、田中智学は日蓮宗の信者でした。
日蓮の「立正安国論」からの影響が大きいのです。
国柱会自体が日蓮宗の信者団体です。

「立正安国論」、つまり「正義を立て、国を安んずる」ですね。
これが書かれた時代は、元寇の直前、北条政権の鎌倉幕府でした。
日蓮は、
仏教を日蓮宗に統一し、国難に立ち向かおう、
と説きました。
「救国」の書です。

北一輝や石原莞爾など、強烈な国家思想の持ち主が
日蓮宗の信者だったのも同じことです。
石原莞爾は国柱会の会員でした。

昭和前期最大の「国難」は、「鬼畜英米」です。
そこで「八紘一宇」を掲げて戦争をやったものの、
結果は、ボロ負け。

そして。
「八紘一宇」と入れ替わり、戦後の「正義」を担ったのが
「左翼思想」でした。「マルクス主義」です。

「正義」が180°転換したようにみえますね。
しかし、それは表面的なことで、本質的には同じかもしれません。
◯◯からの解放と世界の統一。
熱狂と、その結果としての暴力(闘争)や戦争。
今も続いているように思えます。
「正義」は、立場や思想によって、変わり続けるのでしょう。

宮崎県には八紘一宇の塔が残ってます。
高さ36メートルの巨大な塔です。
ところが、現在の名前は「平和の塔」。
何だかなぁ……。正義の話と似てる気がします。

最後に。
国柱会は現存します。
田中智学直系の方が受け継ぎ、
本部の庭園には、宮沢賢治の石碑があります。

何故、と思いますよね。
宮沢賢治は日蓮宗の信者で、国柱会の会員でした。
研究者の中には、
賢治の「イーハトーブ」は「満州」を念頭においていた、
とする人もいます。
宮沢賢治の詩や童話と、国柱会の思想とは結びつきにくく、
意外な感じがしますよね。
by sunra-cloudy | 2014-04-19 18:47 | 人物
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